第七話 霊応の湖(トー)
六日六晩歩き続け、やがて清清しい水の音と匂いに誘われるままに最後の丘を越えた。
しかし、湖からは濃い朝霧が立ちのぼり、岸の様子も定かではないが、オンネパシクル
(渡りガラス)の声に導かれ、東の空の縁が白々としはじめたころに、トーを眼前に見る
ヤ(岸)へと降りて行ったんだと。
日が昇り始めると同時に、朝霧は瞬く間に払われた。それまでは生き物の声のさえ聞こ
えていなかったトーヤが、いっせいに賑やかになった。
湖畔に立った若者は、美しく湖面に映えるトーノシケヌプリ(湖の中の島)を見ながら、
心から美しいトーだと思った。
「風は凪いでしばしまどろみ、波は粛粛として浦にひそんで、湖面は鏡のごとく煌めく。
こんなに美しく立派で、神神しいトーをこれまで見たことはないな」と、つぶやいたとき、
「いや、まったくだ」という声が聞こえ、自分の右にも、左側にも立派な若者が立って、
まっすぐにトーを眺めているのに初めて気が付いたのさ。
「あなたもそうなのだろう。私も旅を重ね、今、ここにたどり着いたのだ」と左右に立つ
若者は、それぞれの言葉で言ったんだと。
若者たちは、それぞれ一人は北、もう一人は東の土地から、この南のトーへやって
来たのだと語ったのさ。
と、そのときだ、目の前の湖面に光の柱が立ち、湖を渡る風の中に三柱の神の姿を見た。
「よく来た、若者たちよ。お前たちは選ばれたのだ。長い旅をしながら試練に耐え、心を
鍛え、精神を磨いて、ここにやってきたのだ。それぞれが選ばれし『観光宣士』として、
使命を果たすのだ」
と、一のカムイが言ったのさ。
「道中、お前たちがカムイたちから手に入れた珠には、それぞれのカムイの気が詰まり、
お前たちそれぞれの経験の詰まった珠である。すなわち、それはお前たちを守り、お前
たちの力の源となる源気の珠だ。」
と、次のカムイが言った。
「観光宣士とは、それぞれが洞爺湖、有珠山、壮瞥滝を護り、また協力してPRすること
で
あり、決して戦ってはならない。何があっても争ってはならない。宣伝こそが使命だ。
何も恐れるな。おまえたちはカムイと共にある。」
と、三のカムイが言ったんだと。
若者たちの顔が輝いたとき、三柱のカムイが厳かに手を突き出すと、光の柱の中から
三本の光が放たれ、三人の若者を包んだのさ。
若者たちは、カムイと合体することで、それぞれの「観光宣士」へと変身をしたのだった。
(さらに3体が合体することによって、「トーヤマン」へと変身するのだ。)
こうして、選ばれしものたち「トーヤマン」は誕生したのさ。
エピローグ
若者たちは神通力をもって、心配している自分の親であるそれぞれのコタンのオツテナに
これまでの旅のすべてと、これからのことについて、すっかり夢で知らせて安心させたん
だと。
心配していたオツテナや家族はもちろん、コタンの人人も喜んで祝福したことは、言うまで
もないことなのさ。めでたし。
イヤイライケレ
モノローグ
やはり、この若者たちが集った湖畔は、私の生まれた家の前のあたりだろうな〜
洞爺村中心の1〜6町内のほぼ中央の3町内。桟橋(船着場)のあったすぐ西隣。
旧洞爺村の中でも、特にロケーションのいい場所だ。「水の駅」まで徒歩45秒ほど。
毎朝、船着場から流れてくる「洞爺湖畔の夕月に」で、起こされたっけ...
ちなみにこの場合の三柱のカムイとは、洞爺湖ジオレンジャーのカムイバージョンを
イメージしていただければありがたいと思う次第なのですじゃ。(なぜか、仙人言葉)
こうして洞爺湖の神(精)、有珠山の神(精)、壮瞥滝の神(精)は、三段階の変身をする
こととなったんじゃな〜
※
観光宣士=洞爺湖ジオレンジャーの各メンバーと考えていただけるとありがたいな。
2009.12.31
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